「こんな場所でお店を開いて、本当によかったのだろうか」
人通りが少ない路地の奥。住宅街の中に間借りした小さなスペース。あるいは自宅の一室を使ったサロン形式のお店。看板すら自由に出せない場所で、毎日花を仕入れ、アレンジを作り、それでもなかなか新しいお客様がやってこない——。
「立地さえよければ」 「もっと人が通る場所にお店があれば」
そう思ってても、今の場所を簡単には変えられない。家賃の問題、家族の事情、今あるものでなんとかするしかない現実。
これからお花の仕事で独立しようと考えている方も、すでに花屋を営んでいる方も、この「立地」の壁に頭を抱えている方は、決して少なくないはず。私もその一人でした。
でも今日お伝えしたいのは、一見不利な立地だとしても、やりようはあるんじゃないか?ということです。むしろ、条件の悪さを逆手に取って、お客様に深く必要とされる花屋になる方法が。

「来てもらう」をやめて、「届ける」に切り替えた
町のお花屋さんのイメージは、素敵なディスプレイで目を引き、通りすがりの方に立ち寄ってもらう。そんな感じでしょうか。
ラフルールが最初にお店を作ったのは大倉山という閑静な住宅街の裏道でしたが、17年後の2020年に横浜市金沢区にある工業団地内に移転しました。ここは、この地域で働く人は通りますが、いわゆる一般的なお客様が歩いている道ではありません。業務用の車やトラックがよく通るような環境です。
人が通らなければ、目を引くこともできません。
そこで発想を変えます。「来てもらう」ではなく、「届ける」。
店の周辺エリアに限定して、いつでも(早朝でも)お花を届けるサービスを始めること。これが、立地条件の悪いラフルールが存在感を増す、もっとも現実的で強力な方法のひとつとなりました。

特に「法人のお客様」に刺さる理由
会社で誰かが退職するとき、お花を贈りたいと思っても、こんな悩みが生まれます。
「誰が買いに行く?」
朝、出勤するときはまだ花屋が開いていない。お昼休みに誰かが自分の休憩を犠牲にして買いに行くしかない。でもそれも申し訳ない。
そんな時、お花屋さんが「朝8時に会社へ届けられます」と言ってくれたら、どうでしょう。
出勤してきたら、すでにきれいな花束が届いていた。お昼休みを誰も犠牲にしなくてよかった。サプライズ感もある。これは法人のお客様にとって、本当に喜ばれるサービスです。

ラフルール(横浜市金沢区)の実例
ラフルールは、金沢工業団地という、会社や工場が1,300社も集まるエリアに、ひっそりポツンとあります。決して人通りの多い場所ではありません。
でも、早朝配達を始めてから、法人のお客様に継続的にご利用いただけるようになりました。
注文で一番多いのは、「朝8時〜9時に届けてほしい」という花束です。皆さんが出勤してくる時間帯は、沿道の花屋さんがまだ開いていない。だから朝、届けてくれるお花屋さんが、ものすごく重宝されるのです。
その次に多いのが、「午前中に届けてほしい」という注文。これも、お昼休みに誰かを買い出しに行かせなくて済む、という理由で喜ばれています。
エリアを絞ってはいますが、そのエリアの中でとことん「便利なお花屋さん」として認知されることで、リピーターが生まれ取引先が広がっていきます。

「秘密の花束」として届ける工夫
会社へ送別のお花を届けるとき、ひとつ気をつけることがあります。
ご本人様に出くわしてしまう可能性がある、ということです。
そこでラフルールでは、花束が入っているとは気づかれないような大きな布製の袋に入れて配達しています。中身がわからないようにすることで、サプライズをちゃんとサプライズのまま届けられる。こうした小さな気配りで、お花を注文してくださったお客様のお気持ちを大事にすることができます。

配達エリアは「明確に」決めておく
ひとつ大切なことをお伝えします。「どこでも届けます」は絶対にNGです。
配達できるエリアを事前にはっきりと決めて、ホームページやSNSに明記しておくこと。これをしないと、無理な距離の依頼が来たとき断りづらくなりますし、自分が疲弊してしまいます。
「○○地区・○○工業団地エリア限定で配達承ります」 「配達は店舗から半径△km圏内」
こういう形で最初からルールを作っておくことで、お客様も依頼しやすく、自分も無理なく続けられます。

「段ボール代も送料もかからない」という強み
最近、お花専用の段ボールの価格も、その送料も、どんどん値上がりしています。通販でお花を販売しようとすると、この梱包コストと送料が、利益をじわじわと圧迫してきます。
でも、自分の足で、自分のエリアに届けるなら、その段ボールも送料も不要です。
立地の悪さを嘆くより、その立地の周辺を徹底的に開拓する。これは、コストを抑えながら売上を作る、とても合理的な戦略です。
人通りのない立地だったから「届ける」ことを考えた。その結果、法人顧客という安定した顧客層を開拓できた。
不利な条件は、時として、思いもよらない強みを生み出すきっかけになりますね。

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今日お話ししたのは、「届ける」というひとつのアイデアですが、花屋の経営にはまだまだたくさんの悩みがあります。集客、価格設定、SNSの使い方、仕入れの考え方……。
花仕事カレッジでは、お花の技術だけでなく、実際に花屋として生き残っていくための「経営の考え方」も一緒に学べます。立地の悩み、売上の不安、続けていけるか分からない不安——そういった現実的な問題に向き合いながら、自分らしいお花の仕事をつくっていく。そのお手伝いをしています。
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